こちらのイベントは終了いたしました

埼玉・ところざわサクラタウン内「角川武蔵野ミュージアム」で、現代日本を代表する歌人・俵万智(たわら・まち)さんの個展 俵万智 展 #たったひとつの「いいね」『サラダ記念日』から『未来のサイズ』まで が、7月21日(水)よりスタートいたしました。それに先立ち、7月20日(火)には、マスコミ向け内覧会が行われ、俵万智さんもあいさつされました。
俵万智さんは、デビュー作で『サラダ記念日』を発表し、新人でありながら現在までに280万部を売り上げる快挙を成し遂げ、一躍有名に。さらに多数のエッセイを手掛けたほか、古典の現代語訳、海外の絵本作品の翻訳、演劇の脚本、小説の執筆、作詞など、幅広い分野で活躍。そして、2021年に第6歌集『未来のサイズ』(2020年、発行:角川文化振興財団)で短歌界の最高賞・迢空賞(ちょうくうしょう)を受賞しています。
その功績を称えて、俵さんにとって初となる企画展が開催されるに至りました。本展では、35年を超える歌業の中から厳選した約300首を、プライベートな手紙や膨大な資料などと共に展示。昭和、平成、令和という流れで俵さんの言葉の世界観を堪能できる展覧会となっています。
俵万智さんのコメントを紹介

内覧会に出席した俵万智さんは、まず、初の展覧会への喜びを語るとともに、開催まで尽力したスタッフの方々への感謝の言葉を述べました。
「今日、初めて展示を見ました。普段は歌集の中にいて、この手の中に並んでいる歌たちが、そこを飛び出して会場の中で生き生きと遊んでいる感じを受けました。読者との新しい出会いを心待ちにしているような雰囲気を、歌の作者としてはとてもうれしく思います。
短歌を展示するということがどういうことなのか想像が付かなかったんですけど、短歌の展示という言葉では言い切れないような、クリエイティブな空間。歩きながらいろいろな短歌と出会えるという空間にすごく面白さを感じました」
さらに、35年に及ぶ創作期間を振り返って、歌に対する考え方の変化を明かしました。
「社会的な視点を取り入れるようになったことは35年の中で得た大きなものだと思います。きっかけは息子が生まれたことが大きいですね。世の中のニュースで自分に関係ないと思うものが無くなりました。環境のことや教育のことなど、いろいろなことを切実に自分のこととして感じられるようになったのは息子のおかげかなと思います。
ただ、変わらないこともあります。自分にとって短歌とは、日々の暮らしの中でひとつずつ“いいね”と思えることを見つけてきた証。短歌があったからこそ見つけてこられたことなので、その“いいね”を積み重ねる歌の作り方は変わっていません」
また、迢空賞を受賞した喜びも口にしました。
「名だたる方々の歌集に連なる一冊に、自分のものを選んでいただけたことをすごく光栄に思います。歌集の賞において私も選考委員をしたことがありますが、候補になるものを読むときはとても緊張するし、特別な時間なんですよね。候補となったときに、そういう時間を選考委員の先生方が持ってくださるだけでも尊いと思いました。その上、評価もしていただけたことに二重のうれしさを感じます」
言葉の森をイメージしたアート空間を短歌約300種が彩る!
会場は時代ごとに昭和、平成、令和の3つのセクションからできています。歌集『サラダ記念日』と『未来のサイズ』を軸に、時代を対比するように作られていて、俵さんの創作姿勢が、子育てを経験するなど人生のステージによって変わっていく姿が感じられます。一方、人々に勇気を与えたり、私たちが生きていく上でポジティブなメッセージを与えてくれる創作の本質を、変わらず感じ取ることができます。



発表当時、『サラダ記念日』は人々の心をつかみ社会現象に!
1987年に歌集『サラダ記念日』が発売され、大ヒットした後、「○○記念日」という言葉が脚光を浴び、さまざまなところで模倣されました。野球では巨人・桑田真澄投手の活躍を報じる記事で「桑田記念日」が使われました。映画「男はつらいよ」シリーズでは、1988年に「男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日」も公開されました。会場では他にも当時の流行の様子を伝える資料がたくさん展示されています。


俵さんが使用していた私物やプライベートな手紙など多数展示!
会場では短歌だけでなく俵さん自身にもスポットをあて、歌と人生をうかがわせる展示品を見ることができます。会場中央に吊るされた木馬は実際に子育てで息子さんに使われていたものを使用。また、背景に海が広がる小窓は石垣島に移住した際に俵さんが眺めていた海の景色を再現しています。



他にも、「短歌は日記よりも手紙に似ている」と話す俵さんの言葉から着想を得て、学生時代に家族に送った手紙と短歌をはがき風に見せた展示品も用意されました。

歌人・俵万智さんの世界観にどっぷりと浸れるまたとない機会です。どうぞ足をお運びください。